「打ってこれはァン?どうだァン?大きいぞォ?伸びてンンンン~? イリーズゴォーンヌゥ~~ ~~~ 高橋由伸、移籍初打席は代打逆転サヨナラ逆転ホームランとなりましたァ~
「うおおおおおぉおぉぉ、凄いぞ由伸ぅ~。あんなにブランクあったのにホンマようやりますわぁ~~。そして、あの4番の中田翔に代打を出した栗山監督のこの采配ですよぉ~。普通の打者だったら、こんな場面で、しかも開幕戦ですよ?普通だったら打席に立つのも嫌ですよぉ~。いやぁあ、やっぱり由伸ですわぁ~。」
「なるほどね~ぇ~」

 二日酔いで見た映像は、とてもとても信じられないものだった。しかしながら、映像に映っている選手は、どこからどう見ても俺だった。髭が伸びていて、ファイターズのユニフォームを着ていて、大田に言われたように髪を金色にしていて、そして、心から野球を楽しんでいるような表情をしていることを除けば、どこからどう見ても、読売巨人軍元監督、高橋由伸だった。
 ファイターズに移籍した時の二岡も、こんな表情をしていた。実を言えば心底羨ましくて、代わってほしいと思っていたが、まさか監督を経験してからその夢が叶うとは。
 
 そして、ヒーローインタビューでの俺は、「ファイターズ最高!」と言っていた。興奮していて何を言ったかほとんど覚えていなかったが、本当に言っていたとは。
 これで、巨人軍に戻ることはもう無くなっただろう。しかし、俺はそのことを喜んでいる。もう、あんなところに戻らなくていいのだと。

 心地良さと安心感に浸っていたら、栗山監督から電話が掛かってきた。

 「もしもし、由伸?飲み過ぎてたけど大丈夫か?大丈夫そうだな。翔は1回二軍に落として、その間、お前に四番を任すことにしたから。荒療治だけど、翔がまた輝くにはこれしか無いから。もし駄目だったら由伸がずっと四番な。両方倒れたら今年のうちは終わりだから、頼むぞ。あ、そうだ。ファーストできそうか?お、できるか。それじゃあ、ミット忘れるなよ!あと、愛してる。お前が来てくれてよかった!」

 そうか、四番なのかぁ。しかもファースト。本当はDHがよかったけど、あいつよりは俺の方がファースト上手いからなぁ。


 それにしても、巨人での俺、こんなに暖かい気持ちで野球をしたこと無かったなぁ。あの時決心して、よかった。最初は栗山監督に騙されたんじゃないかと思ったけど、この道を選んで正解だった。


やっと、俺の野球人生が、いや、人生が始まったんだな。